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根本敬氏インタビュー : 「あのころ」と「いま」を根本さんに聞きました」 (3/5)

10/09/08 10:00

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3 長井勝一という人物

― やっぱり長井勝一さんの存在は大きかったんですか?

木造モルタルの材木屋の2階のね、
もの凄く狭く急な階段で・・・何人か落ちて死んでんじゃないかな?と思いきや一人も死んでない、慎重になるのかな?多分・・・。
で、全てはそこで長井勝一が座っていたあの磁場みたいなところだよね。
やっぱり、長井さんっていうのが何でもないようで亡くなって初めてもの凄い稀有なカリスマ性があったんだなって(笑)「あ、この人がガロだったんだ」って。

― その当時の空気感っていうのが、僕たちの世代は昔の単行本からの想像でしか分かりませんでして・・・

この人が「ガロ」なんだよ、一日中何もしないで。(笑)
外見ながらボーっとしてて、ずーと歴史小説か何か読んでてさ。
昼飯食べてコーヒーとか飲んでボーってしてそろそろ、5時くらいになると「おい、帰るぞ」なって言ってさ。
で、その帰ろうかなってときに原稿を持っていくと「じゃあ預かっとく」って通るん確立が高いらしいんだよね、後から皆の話を照合すると。(笑)
雑誌に穴が空いたときに「こないだ預かったの使っとけ」って。

― 結構デタラメな人なんですか?

長井さんは遅くても17時には帰って若いネーちゃんと飲みに行きたいっていう。
漫画より、お○んこの方が好きは人なんだよ。なめるだけでもいいらしい・・・って噂だよ。あくまでも(笑)
(実際は奥さん一筋のカタイ人だったかもしれない。いやホント(笑))
でも、それも含めて人間的に魅力のある人だったんだよ。
受け入れる懐の深さだとか。親分肌でもあったし。
長井さんが後ろで控えてるっていうので皆、好き勝手できたってのもあるよね。

― 作家としても長井さんがいることで安心感があったんですね。

そうそう、何かあっても長井さんが出てくればっていう。
出なくとも「居る」っていうだけで、もう凄い。
闇市の帝王だった人だからね。逃げるよそりゃ(笑)
身体は小さい人だけど闇市で1億円くらい・・・いや、もっと?、とにかく大儲けた人なんだからさ(笑)
下手なヤクザは逃げるよ。

― では、具体的にガロとCOMの違いっていうのは?

やっぱり功績的に大きいのは70年代。
もともと長井さん自体がフォークが好きでさ、阿佐ヶ谷の行き着けの飲み屋がライブハウス兼バーみたいなとこで、出てるミュージシャンは皆ガロを読んでた頃だからさ、そこでみんなを取り巻くじゃない。
で、ガロに漫画以外の要素も入れようってことで
南伸坊(※1)さんが美学校の恩師の赤瀬川原平さんだとか、荒木さん(アラーキー)だとかああいう人達だとか、コピーライターの糸井重里さんが湯村輝彦さんを連れてきて「情熱のペンギンごはん」(※2)をやったりだとかさ。要するに、正統な普通の漫画以外のところから色んな血がガロに入ってきてガロのDNAを、より「進化」だか「深化」だか、多様性を持たせるワケよ。
だって「情熱のペンギンごはん」なんてさ、漫画の人達には描けない漫画だもんね。
そういう意味では、もう初期のパンクロックに極めて近いよね。
だって初期のパンクの人達って、だいたいNONミュージシャンでしょ?基本的にはNYパンク・・・例えばトーキング・ヘッズなんて美術系の人達だし。
だから、どんどんイラストレーターがガロに漫画家として参入するっていう。

― そういった好き勝手できる状態をつくったのが長井さんだったんですね。

でも、ある程度すると長井のオヤジが邪魔になってくるんだよ。(笑)
とにかく商売の仕方に関しては悪い意味で昔の山師だった頃の性が出だしてね。
例えば、丸尾さんとか花輪さんとか一部の1万部とか2万部とか売れる作家じゃないと重版しないからさ。俺の「生きる」なんてなかなか単行本にしてくれなかったし。
俺の「タケオの世界」「怪人無礼講ララバイ」ってのも出てすぐ品切れになったんだけど
結局、経営母体が変わるまで重版されなかったんだよ、2年、3年、4年?コレ痛いよ。
3大紙から一般誌まで全部書評が載ってさ絶賛してくれてるのに何年間も。
長井さんの頭の中で「丸尾は2万いったけど、コイツはいかないだろう」って。
アレは痛かったよね・・・とっくに品切れで入手困難になってて初版も4000円くらいに値上がってて。周りは「重版しましょう」って言ってるのに。
でもそこも長井さんの魅力で好きなんだけどさ、個人的には「チクショウ!」って思うところもあるよ。(笑)
(でも今となっては全部、すべてOKだね。だって長井さんなんだもん。)
30才になって、ようやく世間に認められる作品を描いたっていうのに。

― 苦水を飲まされたこともあったんですね。

いや、苦水っていうかさ、年齢的にも30才になったばかりの作品で
3年も4年も重版されないっていうのは大きいよ!
これから漫画家として、うんと伸びるか伸びないかって時期に・・・
まぁ、そういうバカバカしい事もあるんだよ。だって所詮コロポックルの世界だからさ。(笑)

― 今となってはバカバカしい思い出で。

今となってはね、その当時はホント弱ったもんだよ。
「このオヤジ、早く死ねばいいのに」ってくらい思ってたよ。
勿論、本気じゃないけど(笑)何しろ大恩人だもの。

※1 南伸坊:編集者、イラストレーター、エッセイスト、漫画家である。1972年青林堂入社。雑誌『ガロ』の編集長を務め、渡辺和博とともに「面白主義」を打ち出し、『ガロ』の傾向を変える。
※2 「情熱のペンギンごはん」:原作/糸井重里、画/湯村輝彦 (情報センター出版局,1980.6)。漫画雑誌『ガロ』の編集者である南伸坊から、漫画執筆を依頼された湯村は、糸井重里の原作で「ペンギンごはん」という作品を発表。かわいいペンギンが登場するが、ストーリーは陰惨な内容というパンクな作品であった。以降も『ガロ』に「ペンギンごはん」シリーズ作品を発表し(1977年は『ガロ』の表紙も1年間担当した)、1980年に『情熱の ペンギンごはん』として刊行。ヘタウマ漫画の金字塔となり、影響を受けた作家は数多い。

※このイベントは都合により中止になりました。
蛭子能収展
日時:9月2日から9月28日まで(平日12時より23時、土日12時22時/水曜日定休)
会場:55CAFE
入場料:ご来店の際は1オーダーをお願いしております。
アクセス:田園都市線 二子新地駅より徒歩30秒
詳しくは⇒ http://ameblo.jp/fiveandfive/entry-10615199676.html


でもやるんだよ!根本敬が映像〜音源そしてトークで誘う『根本茎へのハッテンバの夜』
日時:9月10日(金) 開場19:00 / 開演19:30
会場:桜坂劇場 ホールB (沖縄)
料金:前売 2500円 / 当日 3000円
詳しくは⇒ http://www.sakura-zaka.com/lineup_l.html#a100910


超解毒波止場2010
日時:9月25日(土) 開場18:00 / 開演19:00
会場:六本木 スーパーデラックス
料金:前売:2300円 / 当日:2500円 (ドリンク別)
詳しくは⇒ http://www.super-deluxe.com/2010/09/25/


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<新刊> 「生きる2010」/ 根本敬 著
9月15日発売 青林工藝舎
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根本敬 (ねもと たかし)

1958年6月28日生まれ。自称・特殊マンガ家、蛭子劇画プロダクション・チーフ。他に文 筆・映像・デザイン・講演・出版プロデュース、「幻の名盤解放同盟」として廃盤歌謡曲復刻など多岐に渡り活動。
「因果者」「イイ顔」「電波系」「ゴミ屋敷」などといったキーワードを作り出し、悪趣味系のサブカルチャーへ与えた影響は大きく、日本のオルタナティブ・コミックの作家のなかでも、極北に位置する、もっとも過激な作風の漫画家である。2008年に第11回みうらじゅん賞を受賞。

WEB) 因果鉄道の旅とマンガ





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