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根本敬氏インタビュー : 「あのころ」と「いま」を根本さんに聞きました」 (5/5)

10/09/10 14:17

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5 「あのころ」と「いま」と「これからの作家」

― 僕等の世代だとガロじゃなくてアックスになるんですけど
今「アックスらしい漫画」を描こうとすると、どうしても既に皆さんがガロでやられた事が多くて逆に大人しい漫画になっちゃうとか・・・
「新しいアックスらしい」というような作品が生まれにくい状態という気がするんですね。「この漫画はアックスで良いのか?」って。


それはね、90年代になってメジャー誌が「ガロじゃないけど・・・」って人達にも
ある一定のスペースを与えだしたの。
また結構そいつ等がブレイクするっていう傾向が生まれてきてね。
例えば、吉田戦車とか朝倉世界一とか中川いさみとか和田ラヂヲとか天久聖一とか
がまさにそうだし。
で、その彼等でさえもデビューしてから20年くらい経っちゃうわけだから。(笑)
そのコントラストの中で今のアックスをパッて見ると、昔のガロほど全体的にパラパラって見てもそんなに違和感のある漫画が集まってるという印象は受けないよね。

― そこで僕が危惧しているのは、アックスを読んで根本さんのように「そこに参加したい」と思うこれからの世代が出会うのが「大人しいアックス」だったら
だんだん大人しくなってしまうんじゃないか?っていう・・・


そうなんだね。でも、大人しくなったっていうのは否定的な意味ではなくてね。
逆に発想転換してみると80年代後半の低迷したガロに今のアックスの作家陣がバッと現れたら、それはそれで凄いムーブメントが起きてたと思う。
今はあまりにも多様化し過ぎちゃって1つのムーブメントっていうのが起き難い時代なんだよ。だって、ちょっと前まで木造モルタルの2階で皆が何かね狭いところで版下にネーム貼ってたのに・・・考えられないよ。あの頃、アメリカとかの海軍かなんかが使ってるパソコンを、今、青林工藝舎までが漫画雑誌を作るのに皆でつかってんだからさ。
アナログをわざわざデジタルに変換してるんだぜ、コロポックルの集団が今やさぁ。

―その辺りが「あのころ」と「いま」の決定的な違いでしょうかね?

あとは何といっても景気が悪いってことだよね(笑)
でも「あのころ」と「いま」だったら個人の人生としてみれば「いま」の方がイイ。
何だかんだ言って。良くない中の悪さもあるし、悪いことの中にこそある良さとか解るとモノの見え方がホントに凄く複合的に見える。そういう意味で非常に面白いと思うよ。

―では根本さんからは、これからのアックスはどうなると思いますか?

そりゃ何らかのカタチで残るだろうけどね。
前までは「いい加減なところ」が「曖昧なカタチ」でやってきたけど
やっと「もう少しちゃんとしたトコロ」が「ちゃんとしたカタチにする」ってとこに着地したんじゃないかな。何周もしてやっと辿り着いたって感じ。
今まで登ってきた人も「もう少しちゃんとしたところが参入してきたら、これからどうなるんだろう?」って思ってる。「漫画という世界はどういうトコに落ち着くんだ?」って。
そりゃメジャーな人達はどんどん変わっていくかもしんないけど
でも最低さ、我々の世界の最低部数(3千~3千5百)のようなの人達の需要は決して消え去ることは無いとは信じてる。少子化だと言われて若い奴が減ろうがなんだろうがキープできるはず。
そうである限り自分の目の黒いうちは描き下ろしでも何でもやり続けて生き残っていこうと思ってる、今はね。
だから、楽なのか面白いのかハードなのか何がナンだか分からないよもう(笑)

― でも、その固定の層にはよりディープに作品を届けれそうですね。

うんうん。だから漫画家も漫画を描くだけじゃなくて
紙芝居だったりバンドだったり漫談でも、トークしてビデオ見せたりとか何かそういう事で色んなとこまわって稼げるんだったらそれでもアリだなって思ったりするよ。

― こうした道を選ぶことに「これで良いのかな?」という不安はありませんか?

いや、不安にかられてなきゃ駄目。(笑)
「これで良いのかな?」っていつも自問してなきゃ駄目だよ。
それが無い方がむしろ危険。

―じゃあ。今までも根本さんは・・・?

そうそう。だって自問自答してなきゃ自分が誰で何やってんだか分かんなくなっちゃう(笑)
「俺は何やってんだ?」とかさ(笑)

―自問自答されながら、実際に今まで続けてこれたのは、何か後押しがあったんですか?

それは「うまく自分自身にはまった」っていう。
例えば、勝新太郎はこう言ったんだよね。
色んなパンツの中のコカイン事件とかあってそういう話の流れの中で
「でも俺は、勝新太郎になっちゃったんだから。だから俺は最後まで勝新太郎ってやつを引き受けるほかないだろ」って。
それに似た様な発言だなと思うのは、五代目古今亭志ん生のさ
「どんな世界にも名人っていうものがありますが、先に名人ってものがあるんじゃなくて、名人という受け皿が先にあってそこにスポーンとはまった人間、それを名人というんです。」何かそういうものあるんだなと思って。
また話が飛ぶんだけども
例えばさ、ガロで30年生き残った蛭子さんにしろ、みうらさんにしろ、誰にしろ
自称:漫画家かもしれないけど、ガロでデビューして、とりあえず肩書き「漫画家」でメシを食ってきた人達に皆共通してるのがあって。
皆さ、特別上手いわけじゃないんだよ(笑)
もの凄いベストセラーを描いたとか、もの凄い技量があるわけじゃないし。
そんなこといったら小学校の頃の同級生のハギワラ君だのフジサキ君だのあの子達の方が「断然絵が上手かったなぁ」って。(笑)「漫画も上手かったなぁ」って。
そいつ等は小学校のころからクラスで「俺は漫画家になる」って言ってたけど・・・
漫画家になったって話は一切聞かないもんな。
で、京都のトランスポップギャラリーで村上知宏さんのレクチャーのゲストに川崎ゆきおさんが呼ばれた回があってね。要するに、川崎ゆきお版の「まんが道」みたいな話なの。
漫画家にはどうなったら良いか?みたいなさ。色々と自己分析とかさ。
散々「漫画っていうものは・・・」みたいな話をしてたんだけど
最後にね「でも、まぁ結局は・・・『運』やな」って。(笑)
それで全部をぶち壊しにしたっていう。(笑)

―はははは(笑)

だから広い意味の運なんだなって、才能じゃなくて運なんだって。
で、ついさっき言った話に結びつくけど
名人とか勝新太郎とは言わないまでも
そういう意味じゃ根本敬っていうのも、みうらじゅんも泉昌之も先に各々が在って、でさ、まぁ「みんな運だな」って、スポーンとはいっちゃったんだなって(笑)
そういうもんだなって思ったの、もちろん川崎ゆきおさんもスポーンてはまったんだよ。
だって実際の話さ、
石ノ森章太郎だとか永井豪だとか大メジャー作家がいるじゃない?
ああいう人達のチーフアシスタントとされてる人達ってのは、実は看板になってる先生より
よっぽど面白い話がつくれりゃ、大先生より大先生らしいよっぽど絵の上手い人達なんだよね。(笑)
でも、それは業界の中で知られてるだけで自分はプロダクションのチーフをしなきゃなんないんだよ。そりゃ。それなりの大金は貰えたろうけど、自分は歴史に名前なんて残らない。(笑)
ま、そこなんだよ!(笑)

―それでは、今まさにアックスを読んで「漫画家になりたい」と思ってる、そうした「これから」の皆さんにメッセージなんてありますか?

そうだね・・・俺のトコまで来い!!
辿り着いてくれよ(笑)で、(俺の)出した本を揃えるっと。

―辿りつくまでの何かヒントはありますかね?

まぁタイミングもあるだろうけど、辿りつく人は、辿りつくようになってんだよ。
話を聞くと何かしらあるんだよ、
他のマンガを見て拒絶反応を起こしたら才能あるが、絶対ダメがどっちかだよ。
無論、後者が多数派だけど。
でもまぁ、とにかくトラウマは大事に。
ってことで今日は締めよう(笑)

※ アックス:青林工藝舎が刊行する漫画雑誌。執筆する作家陣や作品から現在でも「ガロ系」と称される。

皆さん「ガロ」に(今の20代の方は「アックス」からだと思いますが)
初めて出会った時に「何だこのマンガは!?」という衝撃があったんじゃないでしょうか?
その後、徐々に昔の単行本などを手に入れ深堀りすることで当時の背景を知ることとなると思います。でも、それは「知識」だけで「当時の空気感」というのはやっぱり分からないんですよね。
そこで、今回は当時者から『あのころ』を聞いてみると、それは創造とは違うリアリティにあふれ作品の裏にある「本当の空気感」があり、僕自身とてもワクワクすると同時に
コレはとても貴重なモノだと感じました。
というのも、
やはり『いま』という時代を捉えるにしても、「あのころ」があったから「いま」がある訳で。そして「いま」も後には「あのころ」と呼ばれるという大きな流れの上に存在していると思うんですね。
だから、先生方のおっしゃる『あのころ』とは当時の一時的な事象を指すのではなく、現代へも通ずる、いや「これから」の世代への手掛かりとなる「あのころ」ではないでしょうか?

― 今も「あのころ」なぐらいガロは大きなバックグラウンドです。―(根本敬)

取材後にこの言葉の意味が少し理解できたような気がします。

(取材:ハヤマックス)



※このイベントは都合により中止になりました。
蛭子能収展
日時:9月2日から9月28日まで(平日12時より23時、土日12時22時/水曜日定休)
会場:55CAFE
入場料:ご来店の際は1オーダーをお願いしております。
アクセス:田園都市線 二子新地駅より徒歩30秒
詳しくは⇒ http://ameblo.jp/fiveandfive/entry-10615199676.html


でもやるんだよ!根本敬が映像〜音源そしてトークで誘う『根本茎へのハッテンバの夜』
日時:9月10日(金) 開場19:00 / 開演19:30
会場:桜坂劇場 ホールB (沖縄)
料金:前売 2500円 / 当日 3000円
詳しくは⇒ http://www.sakura-zaka.com/lineup_l.html#a100910


超解毒波止場2010
日時:9月25日(土) 開場18:00 / 開演19:00
会場:六本木 スーパーデラックス
料金:前売:2300円 / 当日:2500円 (ドリンク別)
詳しくは⇒ http://www.super-deluxe.com/2010/09/25/


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<新刊> 「生きる2010」/ 根本敬 著
9月15日発売 青林工藝舎
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根本敬 (ねもと たかし)

1958年6月28日生まれ。自称・特殊マンガ家、蛭子劇画プロダクション・チーフ。他に文 筆・映像・デザイン・講演・出版プロデュース、「幻の名盤解放同盟」として廃盤歌謡曲復刻など多岐に渡り活動。
「因果者」「イイ顔」「電波系」「ゴミ屋敷」などといったキーワードを作り出し、悪趣味系のサブカルチャーへ与えた影響は大きく、日本のオルタナティブ・コミックの作家のなかでも、極北に位置する、もっとも過激な作風の漫画家である。2008年に第11回みうらじゅん賞を受賞。

WEB) 因果鉄道の旅とマンガ





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