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大西祥平氏インタビュー (1/2)

09/12/22 19:59



そもそも、漫画のインタビュアーとか批評家とかって何をしている人なんだろう?

その疑問を解くべく今回は、漫画家をインタビューする人にスポットを当ててみようということで、ライター・批評家・書店員・自費出版レーベル運営・漫画原作者など多岐にわたって活動されている「漫ぶらぁ~」こと大西祥平さんの仕事場に直撃!

「大西祥平の全貌に迫る!」と意気揚々で望んだものの、ドアを開けた瞬間に唖然、そこはマンガの要塞でした。
そして大西さんの第一声が「何やってる人なんですかって聞かれると訳分かんなくなるからなぁ」とのこと・・・
ハイ、そりゃそうでした。その後お話を聞いて納得です。なので、今回はインタビューっていうよりも大西さんに色々と教えてもらいました!

※今回は話が多岐に渡りまして前・後編となっちゃいました。
長くはありますが興味深いお話なんで最後までお付き合いを!!

【前半】

運命の出会いは「パンダラブー」、そして復刻。

―そもそも、こういう道を進んだきっかけは何だったんですか?

僕はもともと大学でプラプラしながら
古本屋で見つけたレア漫画をコピーして勝手に校舎の壁に貼ったりとか、
勝手に啓蒙活動とか行ってるような奴だったんです(笑)。
その代表格が「パンダラブー」っていう漫画だったんですけど
のちに本当に僕が復刻させてもらったんですよ。コレなんですけど


パンダラブー / 松本正彦
(青林工藝舎)
1973年にひばり書房から刊行された脱力系パンダギャグです。

―ナンセンスっていうかシュールというか・・・

読めば読むほど味があるんですよ。「キャラマンガ」としてはオバQの系譜なんだけど無秩序で、よく見るとキンタマもはみ出てる。僕のマンガ研究の第一歩は「パンダラブー」なんですよ。大学時代に初めて出会って、今までの価値観が軽くひっくり返されたんです。

―じゃあ運命の出会いってやつですか?

そうかも。変な言い方だけど最初は今でいう「ネタ漫画」っぽい扱いで周囲に紹介してたんですよ。
でも、作者の松本正彦さんって人がどんな人か知りたくなるじゃないですか?
そこで調べてみると、「劇画」っていうムーブメントをさいとう・たかを、辰巳ヨシヒロといった有名作家さんたちと一緒に作った人で、その当時の作家さんに影響を与えた革命児の1人だったワケです。まぁスゴイ人だった。その人が、「ひばり書房」っていう貸本マナーの出版社から自分の得意ジャンルでないキャラ漫画を「パンダブームにあわせて何か描いてくれ」って依頼を受けて描いたのがコレだったという。いわゆる「描き殴り」状態で、ご本人も殆ど記憶になかったんですよ。

―そうだったんですか(笑)

でも、掘り下げていくと、そういった貸本に続いて、単行本にすら収録されたことのない知られざる名作が出てきたんですよ。
実は「パンダラブー」と同じ時期ぐらいに
当時のメジャー誌には絶対に載らないような、街の片隅で生きる人達のちょっとしたペーソスを描いたモダンな傑作を
確信をもってB級雑誌に描いてたんですよ。
こっちも気になるととにかく調べるタイプだから「この当時こういう漫画を描いてたのはどういうことなんだろう?」って
調べていくうちに、劇画の事とか、作家さんの辿ってきた道のりとか……
自分も漫画に詳しくなっていくんだよね。

―「パンダラブー」だけで漫画の歴史が見えてくるわけですね。

そう。で、今から9年前……2000年に作者の松本さんにお会いしたのを機に「パンダラブー」を「ひよこ書房」※という名義を作って、同じく松本ファンの青林工藝舎の浅川さんとお金を出しあって復刻したんです。これがあっという間に完売したんですよ。
(そのあと2002年に青林工藝舎から正式復刻される)
その辺から僕の活動のベースができたのかな……
ワケがあったりで本屋に並ばないものは自ら復刻するっていうような。

※ひよこ書房:大西さんが中心になって主宰している自費出版レーベル。

―だけど、いきなり自費出版は怖くなかったんですか?

そのときすでに僕は「タコシェ」(中野の特殊書店/現在は週1日の勤務)で働いていて、その前も京都の「恵文社一乗寺店」っていうマニアックな書店にいたりで、常に自費出版のミニコミを扱ったりしてたから。自分の働いてる本屋で売っただけですよ。自分で推薦POP書いて(笑)。
だけど「パンダラブー」を作って売ってる間にも松本正彦マンガを掘る作業がどんどん続くんですね。


松本正彦という漫画家


―ちなみに松本正彦さん以前にも、作者にスポットをあてて掘り下げたことはあったんですか?

そこまで入手困難なものを掘り下げたのは初めてかな。もちろん、小学生の頃から蛭子さんがブレイクしていた頃の「ガロ」と、黄金期の「少年ジャンプ」と手塚治虫に同時に熱中するような感じで、読み方は特殊でしたけど。……今も変わらないのが逆にちょっと問題かも(笑)。

―じゃあ「パンダラブー」で始めて本屋で手に入らない作家さんに興味をもったと?

いや、もちろん古本屋にも通ってましたよ。その中で見つけたわけで。
だから、松本正彦さんが劇画黎明期の人だっていう知識はあったんですね。
ただ、松本正彦さんの全貌が見えなかった。
最初は「パンダラブー」を見て笑ってたんだけど
その後に、歴史を踏まえて意識的に見ると「・・・あっ、背景があるんだ!」と。
そういう実力のある人がたまたまやっつけ仕事で無意識で描いたから
こういう独特のオーラが生まれたんだっていうのが見えたんです。
そういうのに最初は気が付かなくて。

たばこ屋の娘 / 松本正彦

で、松本正彦さんは貸本マンガ家としての評価は実は高かったんだけど
さっき言ったみたいに、「パンダラブー」の時期に、「土曜漫画」とかの実話系劇画雑誌に発表した知られざる素晴らしい短編があるんです。
それを僕らは細かく細かく集めていく訳ですよ、作者さん自身に教えていただいたり、国立国会図書館に行ったりもして。
「パンダラブー」を出した人間としては、いつしかコレも世に出さねばって。
それで「ひよこ書房」で松本正彦の真価を伝えるべく「たばこ屋の娘」という短編集を出したんです。
でも、この本を作ってる間に松本先生が病気で倒れてしまって、ギリギリで印刷を急いで、それでも間に合わなくて・・・
最終的に、この本を先生に見てもらうことは叶わなかったんだけどお通夜の時にギリギリで完成させて参列者の方たちに配らせてもらって。そうしたら、リアクションが凄く大きかったんですよ。「松本正彦さんはこんなにモダンだったのか」っていう感じで。やっぱりそれは嬉しかったですね。すぐ売り切れたんだけど、これも先日、青林工藝舎から正式に増補版が出ました(2009年10月刊行)。


たばこ屋の娘 / 松本正彦
(ひよこ書房)
いいでしょ? 「パンダラブー」の絵でもあるし。およそ主人公とはなりえない人の話という意味ではいましろたかし作品とも近い雰囲気で。73年くらいに描いてるんだけど、「本物の漫画」なんですよ。

―これは世に出さねばですね!

でもまだまだいい作品があるんですよ!僕の中には「パンダラブー」一冊に、漫画史の勉強から、本を復刻したり、評価したり、ネタ扱いしたりすることとか色んな要素が全部詰まっている。
最終的には「たばこ屋の娘」が間に合わなかったことで、ずっと「申し訳ありません」って思っているわけです。「パンダラブー」を復刻した人間としては、松本さんが生きてる間にやっぱり作者の真価まで世に出さなきゃいけなかった。

―もともと良いモノを見つけたら、「人に伝えねば」っていう使命感みたいのがある気質なんですかね?

うーん・・・あるのかもしれない。
だけど、既成の本の「復刻」はわりとそんなに興味として大きくないんですよ。
もちろん「これは売れるだろう」「何で出さないんだよ」とか、いま世に出てないけど求められてる、みたいなのは古本知識として沢山あるんだけど・・・どっちかと言えば、完璧に散逸したものを出すほうに興味があります。本にもなってないものを出したい。
最近、ジョージ秋山先生のレアな作品たちを出す「捨てがたき選集」っていうシリーズが、恐れ多くも(笑)、僕の監修で青林工藝舎から立ち上がったんですよ。
ジョージ先生は、10年ぐらい前に「銭ゲバ」の復刻(ソフトマジック刊)の発起人をやらせてもらって以来、ずっと追いかけさせてもらっている人で。僕自身のマンガ原体験としても大きな人なんですよ。
メジャー誌で山ほど連載を抱えて活躍するかたわら、常に「私」を追求してきたジョージ先生の非メジャー系作品の軌跡っていうのは、今こそ「ガロ」の流れを汲むフィールドで振り返りたいというか。
だもんで、このシリーズは、自分で巻末インタビューして、解説も書かせてもらって、ときには原本も提供したりしてという(笑)。
第一弾は僕ら世代のトラウママンガとしてお馴染みの「海人ゴンズイ」と未収録作のカップリングで、第二弾は未単行本化作品の「銭ゲバの娘プーコ」に「アシュラ完結編」のカップリング。第三弾「オリは毒薬」。ネタは山ほどあるんで、出来るだけ未単行本化作品を出したいなぁと。
あと、「アックス」70号から関連企画として、レアなジョージ作品を正面から掘りさげていく「ジョージのガレージ」という文章連載を開始しました。

自費出版レーベル「ひよこ書房」とは

―「ひよこ書房」についてお聞きしたいんですけど、そもそも自費出版ですよね?

そう、自分でお金を出して印刷屋さんに持っていくわけですよ。

―それは商業的にですか?それよりも出したい本を出すという名目で?

僕は関西商人の血が流れてるんで、それなりに売れることを見越して作ってます(笑)
実際にどの本も作者さんに10%の印税をお渡しして、ロジャー・コーマンばりに1円も損はしてないですよ。収支的にはちゃんと黒字にはなってます。700部とかですけど(笑)。
まあ、経費を考えるとトントンなものとか、作者に貸したお金を考えるとちょっと・・・っていうのもあるんだけど。
損して出そうとは思わないですね。

―そこで1番最初に出したのが「パンダラブー」ですよね。

そう、2000年ですね。
次に出したのがコレだったかな 「早見純の自薦最低作品集」




純にもぬかりはある/早見純自選最低作品集
(ひよこ書房)
―「自薦最低」ですか(笑)

「映画秘宝」っていう雑誌でずっとやらせてもらっている僕の連載ページで10年ぐらい前に早見さんのインタビューをしたんですよ(1999年12月号掲載)。当時、早見さんはもう漫画家を引退して会社員だったんだけど、「僕らみたいな若い世代にファンが増えてますよ」って話をしてたんです。そうしたらその直後に、「漫画家として復活します!」って宣言して(笑)
関係ないかもしれないけど、なんか背中押しちゃったみたいに感じちゃったわけです。
「ヤベェ、十字架背負っちゃった」って感じで(笑)
で、当時は本が1冊しか出てなかったから、些細な早見純応援活動の一環として出した本なんですよ。

―そんな事情があったんですね(笑)

まあ、そのあと版元からちゃんと出た復刻本にもたくさん編集協力することになって、結局僕も仕事をしたという部分もありますけど。
例えば、最近だったら「変態少年」という本のタイトルは僕がつけたり(笑)。あと、僕が作品のセレクションに関わったり巻末を担当した本もいろいろあります。
で、やっぱり商業出版ですから、良い作品は上から選んでいく訳じゃないですか。
だけど下のほうにも明らかに強烈な匂いが出てるのがあるんですよね。
それは何かっていうと、普通の失敗作って「つまんない」で終わりじゃないですか。
でも早見さんは・・・バッターとしてはホームラン狙いの強打者だから。
フルスイングで失敗するんですよ(笑)

―はははは、完全な強打者ですもんね!

その失敗ぶりがまさしくアーティスティックなんですよ。
作家性が崩れないっていうか、これを読むと、より作家に興味が沸くっていうか。
そこで「最低作品集」っていうカタチにして失敗作を載せましょうよと。
これがなぜか700部刷ってすぐに完売したという。

―今、1話だけ読んだんですけど・・・笑っちゃいますよね(笑)

壮絶なコンセプトを立ててわざわざ失敗しちゃうから。
別に手を抜いたりしてる訳じゃないんだよね。
「本当の強打者の空振り三振はそれでも美しい」っていうのがテーマなんです。
それでパート2も出たんですよ 「純の自己嫌悪」


純の自己嫌悪
(ひよこ書房)
まだ最悪なモノがいっぱいあるぞ、と!

―良い表紙ですねぇ・・・

いいでしょ(笑)。
もちろん商業出版で出してくれる版元があるんだったらそこで出して欲しいんですけどね。


漫画以外での「ひよこ書房」

―あくまでも漫画の出版なんですか?

いや、そうでもないです。
こういうロマンさんの文章の本とかも出してます。ロマンポルシェ。の。
これ、恐ろしいことに重版したから合計1400部なんですよ。もう1300部ぐらい売れたかな。


音楽家残酷物語 / ロマン優光(ロマンポルシェ。)
(ひよこ書房)
手書きのエッセイ集。

―うわ、読みづらい!(笑)(手書き生原稿のため)

これ、2年半も掛けてロマンさんから原稿回収したんですよ。

―結構思い切った本もつくるんですね(笑)

うん、思い切りましたよ(笑)
さすがに商業出版で出してとも言わずにシコシコ作りました。

―これはどういう経緯でつくることになったんですか?

コレはもう訳が分かんないんだけど
僕がいろいろ原作とかの仕事をして金回りが良さげになった頃、
知り合いのロマンさんがよくお金を借りに来るようになったの。
家賃を払えないから家を追い出されるとか言い出して。
こっちはタコシェにいるから逃げられないでしょ(笑)
だから貸しつついつかはモトをとってやろうっていうのと、
あと一番嫌がることをペナルティに与えるのが良いなってのと
まあ、もともと僕自身、ロマンさんの文章が好きだっていう事もあったんで
利子の代わりに
タコシェに来たときに手書きのエッセイを渡してくれたらそれを担保にするってことにしたんですよ。
エッセイを書くってちょっと重いプレッシャーにもなるじゃない。
そしたら、毎週日曜の昼頃にロマンさんがプラプラっとタコシェに来て
「今日も何か書こっか?」って。
だからコピー用紙1枚とペン渡して。
それで僕の仕事が終わる頃にペラ紙1枚の原稿を
「出来たよ」って渡すんです。
こっちも「じゃあ、何だから王将でも行きますか?」ってな感じで
結局メシまで奢らされて。
気が付けば、いつの間にかロマンさんにとっては
金は借りれてメシまで食えるっていう最高のシステムになっちゃってたという。
それが3年くらい続いて本当に本になっちゃった(笑)

―はははは(笑)

でもこの文章、ロマンさんの壮大な生き様の記録みたいになってて本当にイイんですよ。
精神的にヨレヨレになってる時期とか、攻撃的なロジックが炸裂するあたりも含めて
普通の人には書けない説得力があるんです、やっぱり生き様そのものがロマン優光だから。


「グッピー書林」ってのもやってます

―お、また出てきましたね!

コレは「まんだらけ」の店長の辻中さんっていう凄い人とときどきやってる「グッピー書林」っていうレーベルなんだけど
ひよこと同じく、非商業的なモノを復刻するっていう趣旨でやってます。
やっぱりこういうのは出さないとね。


トルコ星座の男たち / 飯島市朗
(グッピー書林)


スケバン貴族 / 飯島市朗
(グッピー書林)
これはまたね・・・読んだら分かるんだけど。

―強烈ですね・・・(絶句)

スゴイでしょ、もう完璧なの。

―すいません、初めて見る作家さんなんですが・・・

そりゃ知らないと思うよ(笑)。70年代にかなりマイナーな雑誌に載ってただけで、単行本化はこの本が初めてだしね。

―大雑把に言うと、何マンガなんですかね?

う~ん、「観念劇画」?(笑)

―もうホラーやエロやSFや全ての要素が詰まってますね。

じゃあ「ハードコア劇画」かな、本来の意味で。
飯島作品の復刻もどんどんやりたいんだけど、時間がなくてなかなか進まないんですよ(笑)。未収録短編はまだまだありますんで。


そもそも復刻というのは?

―そもそも復刻というのは絶版になったものをもう一度出すってことですよね?

まぁ、そういう作業ですよね。

―でも復刻されるときに出版社が変わったりとかあるじゃないですか?
 そういうのって、一度権利を買って・・・

いやいや、ひよこ書房でやってるのはそんな難しい作業じゃないですよ。
別にその原稿を出版社から買い取ってから云々、ってことは全然なくて。
マンガの「絶版」や「版元品切れ重版未定」なんかの定義について細かいことを説明しだすと長くなるんだけど……基本的には雑誌掲載のまま放っておかれたような作品だと、権利を持っているのは作者ですから。
僕はただ単に作者の了解をとって復刻してるだけです。
そういう復刻仕事の一番最初は、10年ぐらい前にソフトマジックっていう版元から出ていた「官能劇画大全」っていうシリーズですね。
この手の古本をずっと集めてたから、復刻のアドバイザーみたいなのを頼まれて。
「コレは出したほうがイイですよ」って企画を立てて
時には具体的に作品をセレクトしたり、巻末に作者インタビューをしたりして。
逆にいうと、僕はそのインタビューをやりたい訳なんですけど。

―そこで出版社が「じゃあ出しましょう」ってなったら復刻になるんですね。

そうそう。基本的には。
マンガ関係の本の編集企画とか協力ものはいろいろありますよ。
最近で話題になったのはジョージ秋山先生のアシスタントを長年やっている人の文章本で「漫画家アシスタント物語」とか。
 

漫画家アシスタント物語 / イエス小池
(マガジン・マガジン)
―あ、これはよく聞きますね!

もともとブログなんですけど、単行本化企画の最初から全部協力してるんですよ。いちおう、形式的にはプロデュースという感じなのかな。

―こういうのって、どこから発掘してくるんですか?

いや、発掘というような感覚はなくて、自然な流れがあるんですよ。ジョージ秋山作品の復刻とか、そういう取材を長年やっていたから、そのアシスタントの方がブログを始めたっていうことで、最初から見ていて。独特の立ち位置から出てくる言葉がすごく面白いなと思って、編集者と作者のイエス小池さんと、本にするための相談を始めたんです。
相談を始めた当時はブログはまだかなり初期だったんだけど、相談期間はけっこう長くて
「こんな感じで本にしましょうよ」っていう話を延々としてたんですよ。

―本で出したら面白いっていう嗅覚がすごいですね。

いやいや、これはイエス小池さんの才能だと思いますよ。
あと、巡り巡ればこれもジョージ秋山研究にとっての超A級資料でもあるわけで。
実際、読み終わると「ジョージ秋山ってスゲェ!」ってなるんですよ。
また、そういう人の下で30数年間も一緒に仕事をしたアシスタントさんっていう関係がどこかおかしくて。
イエス小池さんは、実は漫画に関してもめちゃくちゃ才能のある人なんだけど・・・
どの人が(漫画家として)上がって、どの人が上がらないかっていうのは
本当に運次第っていう。
読むとそこがわかると思います。


―アシスタントという仕事における?

アシスタントで40年もやってきましたなんていうのは、海外ではあんまり無いですよね。
週刊連載で巨大化した日本の漫画界が抱えたカオスの一つですよね。
誰もこの道の先に何があるかなんて分からない。
それが40年たったぞっていう。
そういう本ですよね。


「漫ぶらぁ~」大西祥平とは

―やっぱり1つ1つ聞いていくときりが無さそうですね(笑)

すでにけっこうな時間が(笑)

―そうですよね(笑)では、この辺りでまとめとしまして
 大西さんはそんな自身のことを「漫ぶらぁ~」と称していますよね。
 この「漫ぶらぁ~」についてお聞きしたいんですけど。
 
命名の由来は、原作者の小池一夫先生が昔、原作者になる前に雀士だったことがあって、それを自分で「雀ぶらぁ時代」って呼んでいたのにあやかって「漫ぶらぁ~」ってつけてるんです。わかりにくい(笑)。
小池先生に関しても、今年の春から、「映画秘宝」誌で、5年前に一旦中断していた評伝連載の「小池一夫伝説」を再開したんですよ。これは基本的に「首斬り朝」とか「忘八武士道」とか「修羅雪姫」といった作品ごとの徹底解説をご本人の言葉とともに行うというコンセプトなんだけど、同時にその巨大すぎるキャリアと功績の全貌も出来る限り検証していこうという。
……結局、自分のやってる事があまりにも多岐にわたり過ぎてるんだけど。でも、1つの肩書きだとと動き難いというのもあるんですよ。よく分からないポジションを自称しておくと、どこにもいけるっていうか。
もちろん、一つに絞らないことのリスクもありますよ……一つ一つは全部やりたいことだけど、トータルにはどこを向いてるのか分かんないってのが現状だし(笑)

―はははは(笑)

「揺りかごから墓場まで」って言ってるんですけどね。
漫画の手伝いもするし、実際、作者の方にまわる事もあるし
編集的な事もして、単行本づくりもして、レビューして、評論もして、研究もして、絶版になったあとに復刻してゾンビのように漫画を蘇らせたりもする。
たぶん、「漫画」と同じように、漫画界の「界」の部分にも興味があるんですね。

―なるほど、漫画という軸に全てに興味があって、自身でもやってみるというスタイル。
 それが「漫ぶらぁ~」こと大西祥平なんですね。

いや、あんまり興味のない漫画ジャンルもありますけどね(笑)。
でも、まだまだやりたい事がいっぱいあるんだけど結局、時間が無いという。欲しいのにまだ手に入ってない古本もあるし(笑)。やるやるって言っておいて時間がなくてやってないこともあります。時間さえあれば、本当は今頃飯島市朗全集が20冊ぐらい出てる予定だったんですけどね。

大西祥平
1971年生まれ。書店員(タコシェ)、ライター、漫画原作者。自称・漫ぶらぁ~。
過去の劇画雑誌を漁っておもしろマンガを紹介したりする稀有な人。
また、京都精華大学マンガ学部マンガプロデュースコース学科講師も勤める。

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