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寺田克也氏インタビュー「なぜ絵を描くのか?寺田克也という人物に迫る!!」(6/8)

11/01/09 10:00

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「卵が先か?鶏が先か?」てなことで漫画も「絵が先か?ストーリーが先か?」となると
…まぁ、それは人それぞれで。まして正解があるってものではないでしょう。
だけど、漫画家さんの話を聞いていたら多くの方の原点は「落書き」なんですね。
昔から落書きが好きで、漫画を描くようになってというような。

そこで今回はその原点である「落書き」という点に注目しながら
自称:ラクガキングでもある漫画家の寺田克也さんに突撃インタビュー!!
果たして、寺田克也という人物はなぜ絵を描くのか?




6 本当の根本は「そのままを描ききる」という事


■ 「描写力」と「絵のチカラ」~ディエゴ・ベラスケスという画家~

― 見た以上のモノを描くために、あえて理屈を外して描く事はないんですか?

それは、理屈を知ったうえで理屈を外すなら良いけど。
単純に自分はどういう筋の通し方が好きか?っていう問題だよ。
オレは理にかなった方が好きで、別にそれが正解って訳じゃないけど。
ただ理屈を知らないで、外すのはあまり好きじゃないかな。
別に「我流」でやるのはいいんですけど
「我流」だけでやりきるっていうのは、もの凄い天才じゃないと出来ないので。
たまに「理屈を知ると駄目になる」という言説を聞くけど、駄目になるんだったら
その程度じゃないの?って思っちゃう。
基礎よりも「感性第一」って言う人もいるけど、オレは「それは器が小さいだけでしょ?」って思う。
「結果的に知らなかった」なら後から知ればいいんだけど、「知らなくてもよい」を選択するのは単なる怠惰に感じる。
別にこの考えを人に押し付けるわけじゃないんだけどさ。

― むしろ、寺田さんの場合は知らない理屈に出会うと知りたくなっちゃう?

そうそう、「知りたい」っていうのが原動力なんで。
自分の中では「描きたい=知りたい」に近いかもしれない。
やっぱり、モノを描ききるっていう事は理解するって事だから。
理想としては・・・
例えばさ、オレがハヤマ君の顔を描いて、それを知らない人に見せた時に
ハヤマ君の考えていることが全部分かるような絵になるのが理想。

― それは凄いですね

勿論、本当は何を考えているかオレは知らないの。
だけど、それすらも描いてしまう、それが理想。
オカルトな話じゃないんだけど(笑)

― ははは(笑)

でも、顔つきに人となりって出ると思うし。
愛嬌とかもでるやん?それが描ければ
「多分、この人はこんなことを考えている」
っていうことが図らずも出てしまうような。
写真ってそういうチカラがたまにあるでしょ?
そういう事を絵でも出来るようになりたいね。
何を考えてるか知らないけど、見たまま描いたら必要以上(何を考えてるか分かるくらい)に描けてたって描写力が手に入ったら素晴らしいなって思う。

― なるほど、それが見たモノ以上の描写力ですか。

キャラクターデザインっていうのは、そういう部分がちょっとあってね。
この場合は無いものを描くんだけど、
例えばモンスターのデザインにしてもゲームの中で「いかにもそこにいる」ような。
その世界観の中で生まれて育って死んでいくんだろうなっていうモンスターを描くわけだから、そのモンスターが何を考えているか?っていうのがデザインにも出てしまうような
考え方が出発点なんで。

― 描写力において、理想とする人はおられますか?

400年くらい前にスペインの画家でディエゴ・ベラスケス※っていう人がいて
彼は王様に仕えていたんで、王宮の中で王様の肖像画とか、道化師や小人の絵とか描いてたんですね。そのベラスケスっていうのは・・・箆棒に絵がうまいんですよ、
もう「何これ!?」って言うくらい。
写真も無い時代に、こういう描写力を人間が手に入れられるんや!?
っていうのが何よりも凄いんですが・・・
これは多分ですけど、「描くことの前では全て平等」みたいな意識があったんじゃないかと。
本人がどう思ってたのかは知らないですけど、会ったこと無いし(笑)
でも、彼の絵を見ると描写の仕方が並列なのね。

― 描写の仕方が並列?

王様や王様の家族の肖像画とか以外に奇形な道化師の肖像画とかも多く描いて残してるんですね。
でも、王様だから威厳を持たせて描くとか、道化師やから面白く描いてやれとか、そういう意識が無いんですね。
キャンパスの向こうに座っているモノを
「オレはただココにそのまま写すだけでです」っていう姿勢で描いてるの。
描き上がった作品を見ると、そうとしか思えないものになっているんですよ。
当時の小人の方々っていうのは
王様を笑わせる為とか、哀れまれる為に仕えた様な人達なんだけど
ベラスケスの絵の中では、小人であるとか、道化師であるとか、の背景が何も無くなってて、めっちゃ「人間の絵」になってるの。
話かけると「あ、ホンマ?そうなんや」って返事しそうな。

― 肩書き関係無しに、いち「人間」として?

そうそう、そんな絵になってるの。
意図的に人間らしく描いてるってわけじゃなくて、本当にそのまま描いてると思う。
多分、ベラスケスが描いてる時にモデルをここに写すことしか考えてないから
モデルにもそういうの伝わるんだね。
最初は道化師だから面白い表情で描かれようとふざけてたかもしれないよ。
でも、ベラスケスはそれを描こうとしないから
だんだん彼もモデルとして「自分が求められているもの」っていうのが分かってきて
素の顔になって、最終的には普通の1つの『彼』でしかなくなっているところを写してる。そういう事を絵で出来るんだなっていうのを感じた。

― 『絵』のチカラみたいなことですかね?

そう、「そのままを描ききる」っていうだけで絵にはもの凄いチカラが生まれるっていうのを
最初に感じたのがベラスケスの絵だった。
やっぱり400年前の絵とかいうのは基本的には肖像画とか宗教画がメインで、皆が職業画家なのね。自分のために描くなんて人は存在出来なかったと思う。
絵を売って暮らすとかじゃなくて、パトロンに発注されて初めて描くっていう。
だからオレの中では「求められたモノを描いて出す」っていう意味で、基本的にイラストレーターと同じで。
で、そういう時代を経て近代になって初めて自分の為の絵で生きる画家っていうものが存在できるようになってきてさ。
昔のリアルな描写の絵の古典主義みたいなのが煮詰まって、
自分の為に絵を描ける若い人からそういう古典的なものを壊そうとする訳じゃないですか?
古典主義を批判するカタチでそっから離れようとして、対極には抽象画が出てくるし
その間にも色んな絵が出てくるわけで。
でも、もの凄く原始的な衝動としては「あるモノを写すのが面白い」っていうのが絶対にあるはずなんですね。
何万年も前の洞窟に描いてあった牛の絵も
「牛をそこに写したかった」っていう気持ちがあったと思う。
だから、絵を描くことの本当の根本は
「そのままを描ききる」という事じゃないかと・・・そうじゃないでしょうか?
・・・と、おおざっぱな知識で僕は小さい声で言ってる感じなんですけど。(笑)

― ははは(笑)

絵画史とかに、あまり詳しくないので(笑)
なんとなく知ってる範囲での感じなんですけど。
自分が本当にベラスケスくらいの描写力を持っていれば
そっから崩していって抽象画とかやっても構わないと思うんですけど
オレは「まず、そんな描写力を手に入れてからじゃないとそっちにはいけないでしょ?」っていうのがあって。
まぁ・・・手に入れられるもんじゃ無いんですけど・・・
でも、そういう絵を見てそう思ってしまったから、やっぱり自分はそっちかなって思ってしまう気がしますね。

― ・・・僕も後でベラスケスの絵を調べて見ようと思います。

当時は色んな人が色んな国で宮廷画家とかいっぱいいて、
今はその絵も見る事が出来るわけやん?
やっぱり、どんな業界もそうなんですけど・・・普通の人のが多いよね。
突出した人なんていうのはほんの少し。
さっきから言ってるように
普通の人もトレーニング次第で「見たまま描ける」ところまでは絶対にいけるんですよ。
特に当時は徒弟制とか工房制だから、徒弟をとってそいつが描けるようになるまで教え込むっていう。で、自分の絵を手伝わせるっていうシステムなんですよ。
だから誰でもある程度までは描けるようになるはずなんですね、作業だから。
なので、例えば美術館にいっても、言っちゃえば8割はどうでもいい絵ばっかり。
残りの1割か2割に「とても描けないな」っていう絵があるわけなんですね。
8割の絵を「こんなもんでしょ」っていうのはオレがうまいとかいう意味じゃなくてさ。
絵を「有名」だとか「評価されてる」だとか、そういうレッテルを全部外して見るとさ、
何か王様の後ろに光の輪が描いてあったりするでしょ?これはもう違うやん。
本当に光の輪が見えてたんだとしたら病気なわけ、それは見えてないはずじゃない。
でも、そういうモノを描いてしまうってことは
必要以上に「何か」にしようとしているわけ。
少なくともベラスケスはそういう事はしてなくて、暗い部屋は暗く描くし、王様はそのまま描いてるし。
「他人からはられたレッテルは絵の中には入らない」っていうその姿勢が凄く好きなわけですよね。

― なるほど、その姿勢を含めての描写力なんですね。

だから、そういうののちょっとでも近くに行きたいなっていうのがありますね。
それはマンガであれイラストであれやれる事なんで。
とてもそこには行き着いてないけど、ちょっとずつでもっていうのがモチベーションですから。
といっても、それに向かって努力をしているのか?っていったら
それが常に私の問題となっているわけで(笑)

― ははは(笑)

「今日も寝るか、なんにもやってないけど疲れたし」みたいな。
これがオレの問題点だと思います。

寺田 克也 (てらだ かつや)

1963年12月7日生まれ、岡山県玉野市出身。
イラストレーター、漫画家、ゲーム・映画のキャラクターデザイン、小説の挿絵など様々な分野で活躍。滅法絵のうまいイラストレーターと評判で、海外にまで熱心なファンがいたり、「ラクガキング」と名乗るほど膨大な絵を描くことでも有名。

WEB) terras book
BLOG) terada's book brog
SHOP) TEE PARTY / 寺田克也半袖店




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