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タイム涼介インタビュー(2/6)

11/07/12 10:00

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2 自分がキライで仕方なかった

■4才からグレちゃって

― アベックパンチの話に入る前にタイムさん自身の事を伺いたいと思うのですが、生まれ育った場所っていうのはアベックパンチ的な環境で?

いや、普通の住宅街ですよ。繁華街も無くて家ばっかりの。

― そうなんですか、ではどういう子供でした?

何にもしてなくて、目標も何にもない奴でしたね。
大人しくないし、行儀もそこまで良くは無い、そこまでも悪くない。
4才くらいから・・・ホントに自分が嫌でしたね。

― 4才からですか?

幼稚園に入る前に、3才児教室っていうのに親に入れられたんですよ。
でも僕は4月生まれだから入った直後に4才にわけで。
その時の1才って大きいから、
ものすごい赤ちゃんと入れられてるっていう感じが凄く嫌で。
「何で、泣きわめいてる赤ちゃんと閉じ込められなきゃいけないんだ?」って。
そこでグレちゃいましたね。(笑)

― 早くも4才でグレちゃった。

マセてたんですよ。
ウチには3才上の兄貴がいたんで、兄貴がやる事を一緒になって遊んでるから
体感的には7才なんですよ。なのに・・・「何で?」って。
ずーと続く違和感がありましたね。

― その違和感を、小学校になってもずっと引きずって?

そうですね。
思春期に早めに入ってしまったことで…ホルモンにやられちゃった感じで(笑)
そこで自分がマズイゾーンにいった気がしますね。

― 精神的に不安定な?

何だろう?
なんか不良でもないのに、ナイフとか持ってるアブナイ子っているじゃないですか?
ちょっと『タクシードライバー』(※)タイプの(笑)

※1976年公開のアメリカ映画。監督はマーティン・スコセッシ。脚本はポール・シュレイダー。タクシー運転手のトラヴィス(ロバート・デ・ニーロ)が、腐敗しきった現代社会に対する怒りや虚しさ、逃れられない孤独感から徐々に精神を病み、ついには自分の存在を世間に知らしめるため過激な行動に走る姿を描く。

― 小学生のトラヴィスですか(笑)

別に敵なんかいないのに、仮想の敵を頭の中につくっちゃってね。
何故かナイフを投げる練習をしちゃってるアブナイ奴(笑)

― ってことは、タイムさんもナイフを?

買ってましたね。
勿論、そんな危ないやつじゃなくて、アウトドア用の折りたたみのやつですよ。
何か・・・誰でもそんな時ってあるじゃないですか?

― 銃とかに憧れる時期ありますよね。

そうそう。

― で、そっちの方向に小学生で入っちゃって?

もう、自分が嫌でキライで仕方なかったですね。

― 自分のどういうとこが嫌いでした?

うーん・・・気持ち悪いんですよ。

― 自分の見た目が嫌だったり?

そういうのも思いましたけど…
例えば、些細な事をグチグチと悩んでいたり、
小さい頃は、親のお金を取ったりしちゃって。
僕以外の家族は健全なのに「何で僕だけが泥棒なんだろう?」ていう部分とか。

― 後で「何でこんな事しちゃったんだろう?」ってまた嫌になって?

「あの時」じゃなくて、自己嫌悪に陥りながらお金抜いてる感じでしたね。
何でこれがやめられないんだろ?っていう。
あとは、何で僕は人に嫌な事を言うんだろう?とか。
そういう自分が嫌いでしたね。

― 何でしょう、自分が嫌いというか・・・

悪い方向に自意識過剰なんでしょうね。

― そういうタイプだと・・・友達っていましたか?

小中高一緒だった奴が1人、そいつだけでしたね。
表面上は学校行ったら喋ったり遊んだりする仲間はいたんですけど・・・

― 心許せる友達っていうのは、その1人だけって事ですね。

何か周りが皆バカに見ているっていう、そういう時ってあるじゃないですか?
自分が1番バカなのに(笑)
ずっとそんな感じだったんですけど、
高校の時に「これじゃちょっとマズイぞ」って思って。
もうちょっと、皆が何を笑って楽しんでるかを見ておかないとって
自分に嘘をついて楽しんでみることにしたんですよ。

■高校の頃

― ちなみに、どういう高校だったんですか?

あまり進学とかそういう高校じゃなかったですね。
確かうちの高校で大学にいったのは2人くらいかな?
しかも短大っていうような。

― なるほど、勉強は苦手な感じで?


いや、その小中から一緒の友達と同じ高校に行きたかったんですよ。
だから、そいつが入れる成績のところを探したっていう感じですね。
じゃあ定員割れしてるところがありまして。

― それで、一緒の高校に入れたと。

そうですね。
2年生になる時に、百何十人って減ってましたけど(笑)

― 結構な数字で(笑)じゃあ、高校で環境も大きく変わったんじゃ?

そうですね。
その高校の時にバイトしてたのがアベックパンチの舞台になってるところでして。
横浜のちょっと裏側というか、下町というか。

― 横浜でも観光客が来るところじゃなくて?

絶対来ちゃ駄目なようなトコですね(笑)

― いわゆる、そういった地域で何のバイトをしてたんですか?

そばの出前です。

― 何故その地域で?

時給が良かったんですよ。
別にどういうトコかってフロムAに書いてあった訳じゃないんだけど、
そばの出前にしては時給が他より一回り高くて。
それで飛びついたんですけど・・・すると出前もそういうトコばっかりで(笑)

― いや、場所と値段で察しましょうよ!

そこは、やっぱり童貞だったもんで(笑)
風俗とかラブホテルとか、コワイ事務所とかが結構お得意先だったりするわけで。

― でしょうね。(苦)

行った事もない風俗に行って、
お姉さんのややふやけた手でお釣りを渡されたりとか(笑)
まぁ、あんまり行きたがらないところですね。
道で人が寝てたりして、結構カルチャーショックでしたね。

― そういう世界を高校生で垣間見てしまった

そうですね。

― 例えば、何かとんでもないものを見てしまったりとか・・・?

あるけど言えない!全く言えない!(笑)

― ガチのやつなんですね(苦)そのバイトでモノの考え方や価値観も変わったんじゃ?

価値観スゴイ変わりましたよ。
まず監視カメラにはお辞儀して入らなきゃいけないとか(笑)

― うわわっ

入ってスグに鍵閉めないと凄い怒られるんですよ。

― そこで色々と勉強したわけですね。

もう外国だと思ってましたから。
だけど、いつまでも町のお客さん面してたら駄目で。
そこで働く時は、そこの住人になんだって気持ちになったら怖さは無くなるんですよ。
開き直らないといけない。

― その町にはその町のルールがあるっていうような?

誤解を生まないように訂正しておくと、決して無法地帯じゃなくて
そういうトコにはそういうトコの秩序があるんですよ。
恐い人がいるから、あまりはしゃぎきらないっていうのがあるでしょ?
渋谷みたいにどこに恐い人がいるのか、誰が締めてるのかと分からないから
若者が恐い町っていうのじゃなくて、
ハッキリと「この人がコワイ」っていうのがあるから、
遊ぶ若者たちもわきまえてるんですよ。
一線を越えないように、怒られちゃうから(笑)

― タイムさんはそういう町をどう感じたんですか?

何も知らないで入っちゃったから、そば屋ってカタチで。
社会人になる前に、世間の普通を見る前にそういう世界を知ったから・・・

― 学校生活とバイトと2つの世界を行き来しているような?

いや、学校もそういうとこだったからバイトと解離してる感じはなかったですね。

― ちなみに学校の方はどんな感じで?

無理して楽しんでみたりしてましたね。
まぁ、楽しいのは楽しかったんだけど・・・

― 楽しかったけど?

高校に入った時から、
漫画みたいなのを描きたいっていうのがあったんですよ。
実際にはまだ描いてはなかったんですけど、全部ネタにしようと思ってましたね。

■漫画を描きたい

― 物語をつくりたいと思いはじめた?

何というか・・・
例えば、アベックパンチだったら主人公が考えているようなモノローグが
頭の中にバァーッと巡り出すようになって。
だけど吐き出す手段を知らなかったから、ずっと悶々としてたんですね。

― タイム作品の特徴でもあるモノローグはその頃からだったんですか。

その吐き出す手段が見つかったから、何とか今も保てているっていう感じですよ。
それが頭の中に積もると、溺れて苦しくなるんですね、呼吸が出来ないような。
高校の頃は頭の外に出す手段が無くて。

― その手段が、詩とか歌とか小説とかじゃなくて漫画が自分に合っていた?

いま思えばそうなんでしょうけど、
当時は絵が好きで落書きを描いてたりしたのもあって漫画を選んだんだと思いますよ。

― どんな絵を描いてたんですか?

キモチ悪い絵ですよ、『日直番長』(※)に出てくるブスみたいな絵(笑)
やっぱり笑わしたいとか、目立ちたいっていうのもあって。
でも芸人とかじゃなくて、絵でやりたかったっていうのがあったんですよね。
それを総合した捌け口が漫画だったんでしょうね。
若者特有のアイデンティティも欲しかったのかもしれないけど。
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『日直番長』/タイム涼介
1997~1998年に週刊ヤングマガジンにて連載。セーラー服を着こなすナゾの転校生、アオキ君。転校初日、彫りだしたら止まらない机彫刻家から自分の机を守り抜いたアオキ君は、クラスの仲間から見初められ、ひと晩にして日直番長に。アオキ君とその仲間たちのシュールで低温な学園ライフ。
eBookJapan(電子書籍)で販売中

― それで、高校生活もバイトも意識的に「ネタづくり」としている部分があって?

小中学校の頃とかは自分に起きた出来事がキツかったら全部受け止めちゃうんですよ。
でも、ネタだと思えば酷い目にあっても良いじゃないですか?
オイシイで済むし、覚えておけば使えるし。

― そう考えた切っ掛けがあるんですか?

ただ、自分が嫌いなのに疲れたんでしょうね・・・

― 4才で感じ始めた違和感をずっと引きずってたんですね。

自分が悪いんですけどね。
きっと教育とか関係なくて性格なんですよ。
兄貴は無邪気に育ってたから、親のせいじゃなくて。
多分なんだけど・・・
漫画を描く人ってみんなそうだと思うんですね。
何の不満もないのにわざわざ描かないじゃないですか?漫画なんて(笑)面倒臭いし。
「楽しいことあったー!!」って漫画なんて描かないでしょ。
そういう気持ちは「~なう」で終わらせれば良いんですよ。

― ははは(笑)じゃあ、昔から漫画が大好きで漫画家志望ってタイプではなかったと?

違いましたね、実際に行動に移したのは高校の卒業前だったんですけど
描き方も全く知らなかったですし。
「このツブツブは何ぞ?」っていう・・・スクリーントーンですね。
コレはどーしたもんだ?雑誌の人がやるの?っていう。
だから、ちょっとモノが多い文房具屋で
この正体が売ってる現場を見た時は凄く感動しました。
もしや・・・と思って手に取ったら、「コレだったのかー!!」ってね(笑)

― ははは(笑)

描き始める時に、友達に「枠線って自分で描くの?」って聞かれたんですよ。
今だったら当たり前じゃんっていう、コマ割りが命だよ!って思うんですけど、
その頃は「確かに・・・自分で描くのかな?」って。
印刷かなんかの技術なのかな?って思ってたくらいで(笑)
漫画入門っていうような本も読んだ事なかったんですよ。
とりあえず「吐き出したい!」っていう気持ちだけで、漫画を描き始めたんですね。

タイム涼介 (漫画家)
1976年生まれ。神奈川県出身。1995年、高校在学中に、第176回ヤングマガジン月間新人漫画賞にて『タオル』が入選、デビュー。主な著書に『日直番長』『あしたの弱音』など。ギャグ作品を中心に描いてきたが、2007年よりコミックビームにて新境地を拓くストーリー漫画『アベックパンチ』を連載。2010年、約4年にわたる連載が無事終了。
2011年、同作が『月刊コミックビーム』15周年記念作品として実写映画化される。
現在、コミックビームにて新連載『-I.C.U-』を連載中。

■本人ブログ
タイムのブログ http://ameblo.jp/time000/

■WEB
タイム涼介本店HP http://www.time-ryosuke.com/

■ツイッターアカウント@time_ryosuke
http://twitter.com/time_ryosuke

映画「アベックパンチ」
公式サイト
映画「アベックパンチ」予告編(youtube)




【単行本 eBookJapan(電子書籍)】日直番長
日直番長

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